137億年の孤独
別れ際
愛おしいあなたの額に
キスをする
「必ず会いに戻るね」
笑顔でそう言って
無邪気に駆け出した
あなた
走っていく背中
ちっちゃな点になって
わたしの視界から
消えてしまった
この先の
絶対の孤独と
無限の静寂を思いながら
わたし
つぶやいたの
「行ってらっしゃい」
目眩く旅に
夢中になるあなた
たくさんの
喜び、痛み
悲しみ、怒りと
出会うのね
たくさんの
仲間たちと
出会うのね
わたしのことは
すっかり忘れて
ひとつだったことも
すっかり忘れて
思い出してほしいとは
思わなかった
また出会うときに
すべてが分かるから
お土産話
楽しみに待ってよう
この無間地獄で
じっと…
そうして少し
瞼を閉じて
開いたら
ほら
帰り道に迷う
点のようなあなたが
見えた
あっちに転んで
こっちに転んで
危なっかしいの
どんなに迷っても
なんど輪廻しても
やっぱり
わたしのこと
見つけてくれる
愛おしい
愛おしい
あなた
あなたに出会えるなら
137億年なんて
ほんの一度の瞬き（まばたき）
「おかえりなさい」まで
あともうすこし
あともうすこしで
抱きしめられる
小さな勇者みたいな笑顔
ああ
足があったなら
今すぐ走り出したい
腕があったなら
今すぐ伸ばしたい
無限の信頼の先
事象の地平線の向こう岸
また
あなたに出会えるなら
137億年なんて
137億年の
孤独なんて
